活動レポート2021年4月期
竹富島地域自然資産財団の環境保全活動をピックアップして紹介します。
2021
2021年4月21日
粘土池の生き物たち
旧與那國家の瓦ぶき修復工事で使用する粘土を作成している粘土池。1週間ほど前に葺き替え工事範囲拡大にともなう池の拡張を行いましたが、前回は土の混ぜ込みを完了させることができず断続的に練りこみを行なっています。池が広くなってまだ1週間しか経過していませんが、オタマジャクシやボウフラ、オケラを始めとして、さまざまな昆虫たちが集まる場所に。トンボが卵を産み付けに、ハチ類が水や泥の補給に、ミギワバエの1種がさらに小さなハエを捕食していたり、今や日本全国数を減らし絶滅危惧種II類(VU)となってしまったゲンゴロウの1種も数匹確認できました。足跡からそれらを捕食する鳥も訪れているようで、ひとつの食物連鎖環境が小さな範囲に凝縮されています。今回は、台風が近くまでくる可能性があるとのことで、粘土池周辺の盛り土を増量し、水が溢れ出す部分の補強も行いました。
2021年4月19日
ガヤ種子の採取
竹富島で畑作が盛んだった頃、休耕中の畑にまっさきに生えてきていたのはガヤ(チガヤ)だったそうです。青々と茂るガヤの間をウズラなどが出入りし、ときに刈り取られて茅葺き屋根に使用される風景が竹富島の日常でした。ですが耕作地がほとんどなくなってしまった現在では、ガヤが茂る場所も少なく種子が飛んでこないため、休耕しても外来種のギンネムや雑草が生えてくるばかり。そういった現状を踏まえて、竹富島から消えつつあるガヤを守るとともに、昔ながらの自然環境を取り戻すためガヤ畑を作ることにしました。そのスタートとしてまずはガヤの種子を確保。数少なくなったガヤ自生地のひとつ、中筋集落内の空き地に生えていたガヤから、白いふわふわの穂を摘み取り集めました。今後、このガヤの種子を蒔く場所を整え、懐かしい景色であるガヤ畑作成に使っていきます。
2021年4月16日
フクギの発芽
防風林事業などで使用するため、フクギやキャンギ(イヌマキ)といった樹木の苗を育成していますが、定例の除草作業なかでフクギの種子がようやく芽吹いてくれたものを発見しました。竹富公民館前に生えている大きなフクギの木が落とした実を拾い、ポッドに植え付けたのが昨年2020年の11月。最初に芽吹いたのは3月19日で、竹富の暖かい冬を越えて、3月20日に海開きを迎えた春とはいえないような暑さのなか芽を出してくれました。約1カ月で大きく葉を広げ、立派な苗に育っています。4月16日には2本目の発芽も発見。これから何十年後かに、竹富島を強い風から守ってくれる大きな木になってくれることを願っています。
2021年4月13日
瓦ぶき粘土池を拡大
竹富島で国の重要文化財として2007年に登録された旧與那國家住宅。その修復工事で使用される瓦ぶき用の粘土を、島内の事業所と協働で伝統的な方法を用いて作成しています。半年先の使用を目指して1月14日に5m×5mの面積で土作りを開始したのですが、当初の予定よりも修復範囲が広がることになったため、必要な瓦ぶき用粘土の量も多くなり、粘土池の面積を約2倍分ほど増量して約5m×15mの面積へと拡大しました。事業所の重機で、従来の泥沼の横に5m×10m×深さ50cmほどの穴を作成。そこへ前回同様に畳をほぐしたワラと土を投入し、水をかけながら混ぜ込みを実施しました。丸1日の作業では、半分ほどしか底まで混ぜ込みできず、後日続きを実施します。現在のところ従来の粘土作成池とは接続させず、新しい場所での混ぜ込みが完成したところで2つの場所を繋いで全体の泥を混ぜていく方針です。
2021年4月7日
御嶽のグック積み
竹富島の神様を祀る御嶽のひとつ、清明御嶽の西側に位置するグック(石垣)の一部が傾いてしまっていたものを竹富島の集落支援員が修復するということで、財団でも勉強のために手伝いをさせていただきました。グック積みは財団の事業のひとつであり、竹富島の景観維持と伝統建築技術の継承のためにとても重要なものです。補修範囲はそれほど大きくはなく、グックの端にあたる部分60cm幅程度を一旦崩してから積み直しでしたが、人の出入りが制限される御嶽を囲うグックであるため、内側に石が落ちないように十分に気をつける必要がありました。サンゴ石をハンマーで加工する方法なども教えてもらい、実際に石を整形して積み上げるといった経験もでき、得るものの多い作業となりました。
2021年4月7日
モチ麦の収穫
竹富島での伝統耕作を継承するべく、昨年の10月27日に植え付けをしていたモチ麦の収穫を実施しました。しかし、全体的に実入りが少なく、穂は垂れているものの籾殻のみというものが多いという結果に。病気に感染したことが原因かとも思われたのですが、種籾を県外から取り寄せたため環境が合わなかったというのが大きな要因だったようです。収穫は手作業で、穂のみを刈り取り。実入りの多いものを重点的に1斗袋ひとつぶん程度を収穫しました。収穫後は除草も兼ねて草刈機で刈り取りました。竹富島で昔から育てられていた麦は、すでに種子が絶えてしまっているために今回この種子を植え付けたのですが、土壌や気候が大きく変わると生育がうまくいかないというのも当然の話です。とはいえ、もともと竹富で育てられていた麦も島外から持ち込まれて世代を重ねることで定着していったものだそうで、今回収穫した種籾をまた播種し繋いでいくことで、竹富島で元気に育つ麦を育てていきたいです。
2021年4月4日
粟の間に小豆
昨年の12月26日に種まきを実施した粟が成長し、およそ60cmほどの高さとなっています。今回の種まきでは雑草除去などの管理がしやすいとのことで筋状にタネを蒔くスジマキとしたので、苗も列状に整然と並んで育っています。これを利用し、小豆を苗の列と列の間に植えるという、種子取祭のなかで歌われるユークイ唄にも書かれている竹富島の伝統的な農法を実施することにしました。苗の間を進みながら約20cmの間隔でタネを一粒ずつ植え付け、粟畑全体にタネを埋めました。ただし竹富で昔から育てられている種類の小豆はタネが少なく希少なため、北海道十勝産のきたろまん種を植えました。マメ科の植物は根粒菌という共生細菌を根に持ち、空気中の窒素を土壌に取り込む窒素固定を行うことが知られています。窒素、リン酸、カリウムは植物が成長に必要とする重要な養分で、通常は肥料を混ぜ込むなどして補うところ、マメ科の植物を作物と一緒に植えることで自然とその要素のひとつが供給されることになるのです。竹富島では、科学的に非常に効果が高い農法を昔から取り入れていたようです。